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遠出

 

洗い髪を束ね君は

裸のままで踊っている

鏡にうつるピアノの

ペダルを踏んで犬は眠る

 

こわれたままの花瓶に

水を注いだ小さな手と

まばたきもせず涙を

流しはじめる君がいた

 

ぼんやり見ていたいだけさ

君の言葉にうつるものを

ぼんやり聞いてたいだけさ

君の体が響く音を

 

長い髪を束ね君は

裸足のままで出かけていく

ひたひたたどる地面の

縫い目をとんだ蝶の羽

 

鈍色の夕陽が畔の

冷たい空を流れていく

向こう岸から手をふる

君の影だけ彩られた

 

ぼんやり見ていたいだけさ

の記憶にうつるものを

ぼんやり聞いてたいだけさ

君の体が動く音を

 

夜空に浮かぶ飛行機

溶けたガラスにうつる電光

長い髪を束ねた君は

月の光を浴び踊る

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